Ragazzi blog

サイクルショップ Bicycle Ragazzi のブログ

玉が・・・ない。

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ところで最近組んでいた新車、ハブのグリスアップをしようと玉押し抜いたら



9個あるはずの鋼球が8個



3回数えたけど3回とも8個、24個になっても困るけどね・・・



仕方ないので手持ちの玉を捜して納めておきました



これはまぁ『不良品』の範疇じゃないな、販売店がきちんと確認すれば納車時には
『正常』な状態でお渡しできるんだから。



しいて言えば『低価格競争の末の小さなツケ』のようなもの



消費者ウケする価格でメーカーが存続できる利益を出す商品を作るには
カタログスペックで魅力的な商品を造り、カタログスペックには現れない部分でコストカットする



自転車って分業で1台が作られてるもの
フレーム・変速システム・車輪・タイヤ・サドルetc
それぞれ違う会社が作っている。



フレームやカタログスペックの『華』になる部分を作る会社は
コストを意識しつつも、『魅力的』な物を作ろうとする
一方、コストカットの対象パーツを作る会社は『とにかく安く』作らないといけない。



コストカットの方法、安価な素材・ほどほどの工作精度・歩留まり率の向上・人件費のカットなど、


安価な素材を使うと、強度が落ち重量が重くなり寿命が短いが安く作れる
ほどほどの工作精度で抑えると、工作機械がより長く使えて生産数が増やせる
歩留まり率を上げるには、QC(クオリティチェック)を甘くする(コストカット第一の場合)
人件費のカットは、経験のない者を使う、又は経験のある者の場合はモチベーションも同時にカットしてしまう



今回の『玉が・・・ない。』は、低価格を求める消費者とそれに応えるメーカー、そのしわ寄せでハブメーカーがQCを甘くしハブを組んだ者のモチベーションが低下していたのが原因でしょう。


ともあれ、この自転車の最後の仕上げに携わる僕が『自転車組むとき(だけ)は本気(マジ)なヒト』(笑)
だったので商品本来のクオリティで納車できました。


ちなみに、この商品本来のクオリティで組むってのは時間のかかる作業です。
(特にコストカット意識の強い入門車などは)
僕が安く数を売って利益を上げる量販店の“経営者”ならそんな作業はさせません。
多少の事は目をつぶって同じ時間でたくさん納車整備できたほうが商売としてはよっぽど正しいです。
(今回の玉1個ない状態もノーチェック納車、乗り手もまさかバラして見る事もなく最後まで誰も知らないまま、『当たりの悪い自転車』で終わりだったでしょう)




これからのことを考えると、特に若い人には物が安くなるということを手放しで喜ばず
誰かが泣いているのかも?、と思っていただきたいですね。


その誰かとは作り手(メーカー)かもしれませんし、売り手(販売店)かもしれません
またはクオリティの落ちたものをお買い得と勘違いさせられた買い手かもしれません。


ただ言えることは、メーカーなどの企業は利益を上げるための組織です
削るところは削ってキチンと利益は確保し、自ら泣くようなマネはしません。
売店もしかり、価格で泣いてるところ(量販)はそれ以上に数と人件費で補う
(そのぶん整備のクオリティは落ちる)
ウチも泣きません、定価から心ばかりの値引き程度です
(その代わりといっちゃなんですが価格差以上の仕事はしてますよ)
じゃ、誰が泣くのか?メーカーや販売店からトクしたって思わされてる誰かですよ。



どこで買っても同じクオリティの家電や国産自動車ならいざ知らず
納車整備の内容が完成度に影響する自転車に関しては安けりゃトクってのはありえません。





このまえ80年代のロードバイクが未完成状態で持ち込まれました。
未完成なのでパーツは未使用、それら当時物のパーツは日本製
軽さ、変速性能などは今のパーツの足元にも及びませんが
当時の状況『ヨーロッパ勢に追いつけ追い越せ』を実現するために各パーツから
『より良いものを作ろう』という気概が感じられました。



自分は懐古主義でもなんでもありませんが、古き良き時代というのは
そういうプラス志向の『夢』と『気概』があった時代のことを言うのかな。
四半世紀前に作られた心地よく回るハブを手にしてそんなことを思いました。